横につなげると長くなる。

弱音の掃き溜めです。ようこそ。

小説理論とかいうやつ

 

僕は「理論」とかいうやつが好きです。

なんとなれば書かなくても書ける気になるから。でも結局書けないんですけどね。

 

何で書けないかというと、理論に先立つ経験値が足りないから。僕は手品を10年以上やってるんで、マジックに関しては理論を勉強するとそれなりに身につきますし、理解できます。

これは今まで長いことやってきて、理論として説明されているケースを実際に経験してるから。初心者が理論から入っても辛いだけなんですよね。たしかに始めるきっかけというか指針とはなるけども、それでうまくできるわけじゃない。

 

理論は経験してきたことを言語化したもの。言語化として理解しても、実際先立つ経験がないと真の意味で理解できない。

例えば「納豆みたいな匂い」と言われると、僕ら日本人はあーあれかとわかりますけど、納豆知らない外国人は「納豆という食べ物と似た匂いがするのだなあ」と言語としては理解できるでしょうが、実際の匂いはわかりません。私たち日本人は納豆を実際に嗅いだことがあるから、言語としても感覚としても理解できるわけ。

 

これは創作理論も同じだと思います。例えばこういう理論というか書き方のテクニックがあります。有名なやつ。

 

「怪盗がある屋敷に忍び込んで宝石を盗もうと企む。実はその宝石は偽物であることが後々判明するという流れ。しかし、これだけでは読者の意外性を突くことはできない。なぜなら宝石が偽物かもしれないと読者は勘付いているからだ。さてどうする?」

 

 

答えの1つは「屋敷に獰猛な番犬を置く」。読者は怪盗がいかに番犬をクリアするかという点に着目するため、宝石の真贋について気を配る余裕がなくなるから。

めちゃくちゃためになる書き方ですが、これも実際に書いてみて何か足りない、スリルが足りないという経験があってこそ理解できるわけです。もし書いたことない人が理論だけ先に取り入れて書いたとしても、効果はないと私は思う。

 

 

これに関して思ったことがひとつ。田丸雅智さんの「たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座」という創作理論の本があります。この本めちゃくちゃ好きなんですけど、これ、レビューがめちゃくちゃ的外れで、酷評してる人が多かったんですよね。

この本はショートショート書いてみたいけど、なにから始めたらいいかわからないという方にほんとにオススメの本です。僕はある程度ものを書くようになって(要するに経験値が溜まってから読んだんですけど)、それまで感覚的に、無意識に、やってはいたけど、メソッドとしては確立していなかったこと(ここではアイデアをいかに形にするかという点なんですけど)、この本ではそれがちゃんと言語化、そしてメソッド化されているところが凄いんです。

レビューに「こんなのは誰でもやってる」と書かれてて、たしかに創作してる人間は無意識にやってはいるんだけど、この本がすごいのは創作する人間が無意識にやってることを、創作やったことない人にも言語化してわかりやすく伝えてることにあるわけで。

これは創作入門者だけに役立つものではなく、僕らが創作に行き詰まったとき、なんか最近おかしいなあと思ったときの特効薬になるもの。

 

言語化、そしてメソッド化することの大変さがわかってないなあと少し寂しくなりました。